TURNTABLE

welcome to my inner space

酒と本と友情、そして少しの恋

 

「そう。毎晩毎晩、明け方まで飲み歩いてる酔っぱらいはみんな病気。寂しい病。息子もそうでしょう?家にひとりでいても寂しいから、用もないのに飲みに出かける。違う?」

---(略)---

「病気じゃない人は、ちゃんと終電で家に帰るのよ」

佳子さんはぼくを見て微笑んだ。

 

月に1日か2日ほどゴールデン街へ「通って」いたことがある。金曜の仕事終わりに新宿駅で降り、足早にアルタ前を通り過ぎて見慣れたドーナッツ屋のすぐ脇、魔界の入口を潜り抜ければそこは大人のわくわくワンダーランド。(?)

 

あの頃、金曜の夜というのは何故か、時間を歪ませる気がしていた。終電と言う概念なぞどうでもいいと言わんばかりに、わたしは朝日を感じるまでのあいだ、大人のワンダーランドを練り歩いていた。その場限りの友達を作り、様々な人の話に耳を傾け、はしご酒に興じていた。「寂しさ」という感情とは無縁だった、気がする。本来一人でいることを愛してた自分にしてみたら、「寂しい」から飲みに行っているという発想はなかったように思うのだ。始発電車に向かいながら、気怠く纏わりついてくる朝日を見て、現実に引き戻される瞬間が憎かった。

 

---

馳星周さんの「ゴールデン街コーリング」読了したのだけれど、まぁ数年前に酔っぱらって練り歩いた場所とか、あのときの感情がちらほら蘇ってきて、何だか少し感傷的になりましたね。馳さんご本人の自伝的な感じみたいで、80年代のゴールデン街なので、今とは全然違う雰囲気だったのだろうとは思います。それでも、その場所を想像できる、何となく共感できる気がするのは、少なくともその場所を歩いたことがあるから。

 

冒頭にあげた通り、佳子さんという方がこの話の中で「病気じゃない人は終電で帰るのよ」と仰っていましたが、そうか!と今更ながらに膝を打ちました。

そうか、わたしはどうやら病気だったらしい。

コロナ期にほぼ飲みにいくことをやめ、まぁ去年の暮れとか年始とかはちょこっと飲みに行ったりもしたけれど、まぁでもそれでも数年前ほどの熱量はなくなっています。

 

どうしちゃったの・・って感じですが、まぁまた飲みに行ったら「病気」を発症してしまうんじゃないかなという気がしなくもないんですよね。一度病んだら、生涯病み続ける。そんな病気のような気がしてなりません。もう、「わたし」そのものが病気なのかもしれない。

 

本の感想ですが、ゴールデン街へ行ったことのある方にとっては楽しめるかな、と思います。青春物が好きな方にもおすすめですかね。

殺人事件が起こり、最終的に主人公が真相に気が付くのですが、ミステリという感じは薄いです。東野圭吾的なものを求める人には向いていません。(伏線もありますが、わたしはその前から何となく犯人はわかってました)

人物の心情にフォーカスしていて、主人公の感情やまわりの人との関りを丁寧に描かれてるのが良いですね。主人公がよくまわりの大人に奢ってもらったり、酒を飲む描写が多いので、とにかく酒が飲みたくなります。次の休みはビール飲みに行こう🍺